『 生命の合唱が駆けめぐる五月の空へ 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
宇治の名物トビケラに群がる1歳児さん。自ら飛び回るその勇姿におっかなびっくり手を伸ばしたり、床を手でパンパン鳴らして彼らを驚かせてはじゃれあうように遊んでいます。そのようすに興味津々の仲間が一人二人と身を乗り出しては覗き込んだり、それぞれの仕方で吸い込まれていきます。生きているものどうしの磁力は半端なく、ついには窓際に置かれた段ボールと窓のサッシの僅か10数cmの隙間に逃げ込んだトビケラをハイハイで追いかけ、頭部がすっぽり隠れるほどに同じ隙間に頭を突っ込んで、トビケラと生命感を一にしていくのでした。
森で「デカミミズ(大きいミミズ)」を見つけた4歳児さん。最初は直接触ることをためらっていたこどもたちでしたが、かかわっているうちに親しみが湧いてきたのか、素手で触り始めました。 「どっちが顔やろ?お尻やろ?」「こっちがお尻や!だって臭いもん!においでみ!!」 「うわぁ~くっさ~!チ〇チ〇みたいや!」「チ〇チ〇のびてる!」とミミズの生態に興味津々!体験の深まりとともに大盛り上がりのこどもたち。それでも最後は、「疲れてきたし土にいれてあげよう」とデカミミズの立場になって、自分たちの畑に戻してあげるのでした。
また、隣のおっちゃんからカマキリの卵をもらった年長さん。孵化を楽しみにしていたある日のこと、お散歩から帰ると大量のカマキリの赤ちゃんが産まれているではありませんか。大喜びのこどもたちは早速プラ容器に緑、黄緑、黄色の三色グラデーションを基調に色を塗りカマキリ用のプールをつくったり、新たなお家をつくったりし始めました。ホワイトボードには、「一匹だけを育てる」「全員を大きくして逃がす」「二匹だけ逃がす」「3、4歳児さんにあげる」などなど、今後の願いを反映した意見があげられています。ところが、嬉しすぎて家の玄関(ふた)を開いて観察したり、触ったりしているうちに指でつぶしてしまったり、逃げ出したりして、二日経った頃には影も形も消えてしまったのでした。
「遊び」は生命の泉です。「遊び」がこどもを、人間を元気にしていくのですが、その遊びには、こんなにも多様な生命とのつながりがあります。新緑の勢いのごとく「生の本能」に満ち満ちて溌剌としたこどもの姿をみるにつけ、本年4月に発足、施行された「こども家庭庁」と「こども基本法」のキャッチフレーズさながらに「こどもまんなか」の社会の実現を願わずにはいられません。生命の合唱が駆けめぐる五月の空へ。