宇治福祉園について

『子どもん中の子どもを生きる!』のお話 

2021.3.23

『子どもん中の子どもを生きる!』のお話 

理事長 すぎもと かずひさ

「童心のつどい」では、黄檗の年長さんは遊びの種を蒔き育てる「遊びのチャンピオン」に、三室戸・Hana花の年長さんは子どもごころを謳い広げる「劇団こども座」になった。そのこころは「子どもん中の子どもを生きる!」である。一人一人(=みんな)のこころは生き生きしているかな。一人一人(=みんな)の「いま」に、全身全霊を傾け、その心身の様子や動きへあたたかに応答しながら、適切な関わりを模索・探究しつづけること。これが「みんなのき保育」の志す線である。

「いのちを大切にする」という法人の理念は、子どもの不安を安心へ、恐れを勇気へ、失敗を試行錯誤へ、経験を自信へ、裁き心を受容へ、と誘う。あたたかで受容的、共感的、肯定的かつ自由な雰囲気が、一人一人(=みんな)の希望の明日へ開かれている「みんなのき」の風土を耕す。

その土壌に、乳児期からの「創造のライン」を意識した保育が芽生えていく。一人一人(=みんな)を見守っていると、遊具を使いたいときに力ずくでも使える子、誰かが使わなくなった隙を見て使おうとする子、すぐに取られる子、あきらめて違うもので遊ぶ子、数を揃えても友達が使っているものが欲しい子などなど、実に様々である。取り合いが起こる。泣きが聞こえる。一人の泣きは私の泣きであり、みんなの泣きだ。この泣きの減少を目指す試行錯誤の中で「取り合う遊びから創造のラインを結び、絡ませ、分かち合う遊び」への転換は図られていく。

3歳児さんになる頃には、子どもの直観的思考と行動によって創造物が園中に溢れかえる。作り描いた当人の作品があれば、様々な子どもが好き好きに作り足したり描き足したりする共同の作品もある。当初は野菜だったモノが用途や使う子どもによってロケットや飛行機など、次々と多様に見立てられては、仲間を伝っていく。使いまわされていくごとにみんなの創造的な関わりや意味が加味されていくといった風情だ。

どの子も「現在を最も良く生きる子ども」に、「生来の能動性や自分らしさを発揮しつづける子ども」に、「自分のやりたいことを自らの手足で見つける子ども」に、「様々なヒト・モノ・コトへの好奇心を育み、意欲的に関わる子ども」に、「それぞれの仕方で遊びの世界を生み広げ、自分なりの意味生成の詩を謳歌する子ども」になっていく。「子どもん中の子どもを生きる!」人生の「根っこ」に「みんなのき」が伸びていく。