『 せかいまたぎのめでる 』 のお話

『 せかいまたぎのめでる 』 のお話

 理事長 すぎもと かずひさ

「せかいまたぎのめでる」、今年の運動会のテーマです。生きていくことは、世界していくこと。どんなに小さな、ほんのささやかに思える体験のなかにも、子どもたちは大きな喜びや感動を見つけています。その一つひとつが新たな世界への尊い一歩であることを、あの仕草や表情のそばで暮らしをともにしておられるみなさんは、よくご存知のはずです。

世界を感受した瞬間に世界をまたぎ、そこから感出されていく内なる世界と、行為や現象を通して姿を現す外なる世界。その双方を縫うように楽しみ味わいながら、子どもたちは生きています。感動と感応、想像と創造が出会うところから、心情や意欲といった内なる世界と、行為や態度といった外なる世界が、ともに生まれてくる。その二重のいのちを象徴するキャラクターを「めでる」と名づけました。「愛でる」と「芽出る」。安心と信頼を育む「愛」と、挑戦と探究が芽吹く「おめでとう」のこころもちです。指針や要領の言葉でいえば、養護と教育の一体性を一語に込めています。

さて、めでるはまたぎ(マタギ)です。「武器」を「好き」に持ち替えて、「好き」を重ね「好きる=スキル」を伸ばしていきます。自由の園は、好きが集う遊びの宝庫。一人ひとりが好きなことを楽しみまくる道中で、いいこと、いいもの、いいひとに出会い、「えもの」を見つけて持ち帰る。そのこころは「えもの=ええもん」です。

夏の遊びを満喫した子どもたちは、土から水、水から絵の具、石鹸から泡、植物から染料へと、混ざりと分離、気体と液体、浮力と重力など、世界をまたぎまくっての今日です。

先日、ある2歳児さんがプールで横向きにバケツを浮かべ、それをまたいで浮こうとしていました。けれど開口部から水が入り、思うように浮きません。そこで500mlのペットボトルをバケツの中へ差し入れました。幾秒か浮いたものの、栓をせず、口から泡がぷくぷく。たちまち沈んでいきます。ところがその子は、太腿に気泡が絡みつきながら水面へ上っていく感触を、触覚や視覚をはじめ、全身で楽しみ味わっている風情。栓をしていなかったことが「失敗」どころか喜びに変わる、めでるの本領発揮です。意図した浮力は続かなかった。でもそのかわり、予期しなかった気泡という別の「ええもん」をゲットしました。

「意図した世界→予想外の現象→身体的感受→新たな面白さ」へ。遊びそのものが世界をまたぎ、「もう一回」「今度はこうしてみよう」がわきだしていきます。感覚と身体、想像と現象が、ひびき、まざり、わきだしながら、内なる世界と外なる世界がともに生まれてきます。「せかいまたぎ」とは、移動を超えた、感覚と身体による世界生成そのものです。

さあ、みんなで「愛でる」「芽出る」になって、自分たちの心身をくぐりぬけ、新たな美しい世界へでかけるぞー。

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